舌痛症の体験談
最初は大きな病気なのかと思って専門の医療機関に通った
(39歳 専業主婦)
水分補給をしているつもりですが治りません。
舌痛症とは?
舌痛症の定義
舌が痛いという症状があるにも関わらず、本人以外の人が見ても舌に異常は見られず、臨床検査をしても異常がない痛みのことを狭義の舌痛症(glossodynia)と呼びます。ただし、舌が痛い場合には、自己判断せずに、医師に相談しましょう。他の病気が原因であることもあるからです。
他の病気が原因で舌痛症になるもの
- 潰瘍、炎症、悪性腫瘍、口腔カンジタ症
- 心・血管障害や食道疾患など他臓器疾患
- 神経痛、心身症、感染症、免疫、血液疾患、中毒など全身疾患
- 亜鉛欠乏、貧血等
他の病気が原因で舌痛症になっている場合には、そちらの治療を行うことが必要です。ここでは、そのような臨床検査をしても異常がない狭義の舌痛症についてご紹介します。
舌痛症はどのような場所が痛くなるのか?
多くは、舌の先端(舌尖部)や、舌の周り(舌縁部)に痛みを訴えるケースが多い。また、唇や歯肉、その他にも口の粘膜に痛みを感じるケースもある。
舌痛症は更年期の女性に多い
「更年期に多くみられる口腔疾患」 更年期世代の女性には, のぼせ, ほてりなどのいわゆる更年期症状のほか, 口腔乾燥感, 味覚異常, 顎関節痛, 舌痛などの口腔に関する疾患が多く認められる。
引用(診断と治療社 産科と産婦人科 15. 舌痛症とHRT)
舌痛症の原因
臨床検査をしても異常がないにも関わらず、舌が痛い=舌痛症の原因についてですが、実は、舌痛症の原因は解明されていません。いくつかの説はありますが、まだ確定しておらず、研究者の間で意見が一致していません。ここでは、原因と仮定されている要素をご紹介いたします。
自律神経失調
ストレス等により、交感神経や副交感神経のバランスが崩れ、その結果として、舌痛症になるとする考えがある。
末梢神経・中枢神経障害
末梢神経(三叉神経・舌咽神経・ 顔面神経など)や中枢神経系の障害が、舌痛症になるとの考えがある。
唾液量の低下
加齢や薬の副作用(口喝)など、唾液が減少するようになると、舌痛症の原因になるとする考えがある。
舌痛症の治療
舌痛症は、治療法が確立されていない難治性の慢性疼痛です。
西洋医学でのアプローチ
- 抗うつ薬・抗不安薬などの処方
- ビタミン剤や鉄剤などの処方
漢方でのアプローチ
- 立効散、黄連湯、柴朴湯、加味遣遙散または患者に合わせてその他の漢方薬を処方。漢方は患者の状態を診察しながらの処方なので、医師に相談しながら治療をすすめる。
舌痛症に対して、先人たちの有効報告にある立効散や黄連湯、柴朴湯、加味遣遙散などをまず処方して経過を見ても良いと思う。それらが無効の場合、望診(視診)、聞診(聴診、におい)、問診、切診(脈診や腹診)を基に、舌痛症を持っ 患者さんの状態の治療(場合によっては舌痛症から離れてみて)に立ち返ってみる。気・血・水の量や巡りに異常はないか、肝・心・脾・肺・腎の状態はどうであるかで方剤を考える。
引用(日本ペインクリニック学会誌 23(2): 106-109, 2016)