歯科医が解説!口臭の原因は「唾液」にあった!?その理由とは
- 2018/6/17
- 歯科医師による記事

口臭について考える上で、絶対に無視することのできないのが「唾液」です。
口臭を強くする原因といえば、歯についた汚れや舌苔、歯周病などがよく挙げられますが、唾液はこれらの原因とも深く関わりがあります。
そこで今回は口臭と唾液の関係について、詳しくご紹介していきましょう。
目次
唾液がお口の息のキレイを保つ
皆さんは普段あまり「唾液」について深く考えることがないと思いますが、唾液は実に様々な働きで私たちのお口や体の健康を守ってくれています。
それは口臭に関しても例外ではなく、唾液はお口の中の嫌なニオイを消してくれる役割をになっているのです。
唾液が口臭に及ぼす効果
クリーニング効果
私たちは1日に1~1.5Lもの唾液を分泌しています。その唾液は私たちにとって天然の洗浄剤であり、お口の中にたまった汚れを洗い流す働きを持っています。
またお口の嫌なニオイの元となるのがお口の細菌が発生する揮発性ガス(VCS)ですが、そのニオイ成分をきれいに洗い流すのも唾液の重要な役割の1つです。
殺菌効果
唾液の中にはリゾチーム、ペルオキシターゼ、ラクトフェリンといった成分が含まれており、これらの成分が嫌なニオイを発生させる菌を除菌、殺菌しています。
唾液の性状と口臭の関係
唾液の多くは水分からできていますが、その性状は水分が多く「サラサラ」してるものや、反対に水分が少なく「ネバネバ」しているもの、その両方が合わさり合ったものなど様々です。
そしてどの性状の唾液が分泌されるかは、唾液の分泌をコントロールしている自律神経の働き方に左右されます。
サラサラした唾液:口臭予防には◎
お口の中をきれいに洗い流すには、流れがよいサラサラした唾液を多く分泌するほうが口臭を予防するうえでも効果的です。そしてこのサラサラの唾液は副交感神経の働きによって分泌が活発になります。
副交感神経は「緊張を緩めて体を休ませる神経」といわれているように、サラサラした唾液も体がリラックスした状態の時に多く分泌されます。
ネバネバした唾液:口臭予防に△
水分が少なく粘り気の多い唾液は、お口の中を潤したり洗い流したりするには不向きです。このネバネバした唾液は、特に交感神経が有意に働くと多く分泌されます。
交感神経は「心拍を上げ、体を活発に動かす神経」として知らるほか、ストレスなどとも深く関係しています。緊張した時にお口の中が粘つくのは、交感神経が強く働くことでネバネバした唾液が増えるからです。
口臭を強くしてしまう「ドライマウス」その原因とは?
唾液が口臭の救世主となるなら、唾液の量が減りお口が乾きやすくなる「ドライマウス」は口臭にとっては大敵です。
ここではドライマウスになる原因について詳しくご紹介していきたいと思います。
生理的なもの
唾液は健康な人であっても分泌される量は変化します。例えば就寝時、空腹時などは唾液の量が少なくなるため、一時的に口臭が強くなります。また女性であれば生理前や生理中などはホルモンバランスによって唾液の量が減るため、やはり口臭が強くなる場合があります。ただこれらは「ドライマウス」といわれる状態ではなく、あくまで一過性のものですのであまり心配する必要はないでしょう。
生理的な変化で気をつけておきたいのは、加齢による唾液の分泌量の低下です。年齢を重ねると体の様々な機能が衰えてくるように、唾液の分泌量も次第に減少していきます。そうするとお口の中も乾きやすくなり、口臭も強くなることがあります。
口呼吸
口呼吸をすると当然ながらお口の中が乾きやすくなり、口臭も強くなります。口呼吸をする原因は人によって様々ですが、例えば慢性的な鼻炎やアレルギーなどによって鼻呼吸がしづらいことや、歯並びが悪いことなどがその要因として考えられます。
疲労・ストレス
先述にもあるように唾液の分泌は自律神経(交感神経・副交感神経)に支配されており、交感神経が優位になるとお口の中が乾きやすくなります。
疲労の蓄積やストレスによって自律神経のバランスが崩れることも、ドライマウスを引き起こし口臭を強くする原因になります。
全身の病気
糖尿病や腎臓病、シェーグレン症候群といった病気は、唾液の分泌を減少させドライマウスを引き起こすことが知られています。
薬物
血圧を下げる薬やアレルギーの薬など、服用する薬によっては唾液の分泌が抑えられれお口が乾きやすくなるものがあります。
また薬物ではありませんが、過度なアルコールもお口の乾きの原因となるため注意が必要です。
唾液をバンバンだして口臭を予防しよう
口臭対策には色々な方法がありますが、その中で最も簡単でお金もかからず、また効果が高いのは唾液の分泌をうながしてあげることです。
特にお口の乾きが気になる方は、ぜひ以下の方法を実践してみましょう。
とにかくよく咬む
唾液をたっぷり分泌するには、とにかく「咬む」ことが一番です。毎日の食事も柔らかいものばかりでなく、1品は歯ごたえのあるものをしっかり咬む習慣を取り入れてみましょう。
またシュガーレスのガムを咬むことも、唾液の分泌促進に効果があります。
唾液腺のマッサージする
唾液は耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)と呼ばれる唾液腺から分泌されます。この唾液腺をマッサージするようにゆっくり押してあげると、唾液がお口の中にジワッと広がる感覚を感じることができます。
3つの唾液腺の中でも、口臭予防に効果が高いサラサラの唾液が多いのが耳下腺と顎下腺です。耳下腺は耳たぶの前方あたりを、顎下腺はあごの骨の内側の柔らかいところを指全体で優しく押すとよいでしょう。
リラックスできる時間をつくる
唾液の分泌とストレスには密接な関係があり、過度なストレスは唾液の量を減少させお口の乾きの原因になります。
十分な休息やリラックスできる時間を持つことは、唾液の分泌をうながし口臭の予防にもつながります。
まとめ
お口の嫌なニオイを作り出すのはお口の中の汚れや細菌ですが、そのニオイの元をコントロールするうえで唾液は重要な役割をになっています。
口臭が気になる人はお口の中をきれいにすることにくわえ、唾液をたくさん出して清潔さを保つことも忘れないようにしましょう。
執筆の歯科医師
歯科医師として約10年働いてきた経験を元に、歯科の専門情報を皆さまにわかりやすくお届けします。