口臭の中には何らかの問題によって発生する病的な口臭以外に、健康な人でもニオイを発してしまう生理的な口臭があります。日本歯科医師会が10代から70代の男女1万人を対象におこなった調査においても、全体の約8割の人が「自分の口臭が気になった経験がある」と回答しています。
この誰にでも起こりうる生理的口臭は、実は1日のリズムやその日の体調によって、ニオイの強さに変化が生じます。
ではどんな時に口臭が強くなりやすいのか。それをあらかじめ知っておけば、気になる口臭を未然に防ぐことも可能になるでしょう。
そこで今回は1日の中で口臭が強くなるタイミングと、その時に応じた対策法についてご紹介したいと思います。
目次
1日の中で口臭が強くなるタイミング
1日の中でも、特に唾液の量が減りやすい時間帯に口臭は強くなります。
唾液の量は口臭と深く関係しており、唾液の量が多い時ほど口臭は少なく、反対に唾液が少なくお口が渇きやすい時ほど口臭は強くなります。
ではどのタイミングで唾液が減ってお口のニオイが強くなるのか、具体的にみていきましょう。
朝起きた直後
1日の中で唾液の分泌が最も少なくなるのが、夜寝ている時間。朝起きた時にお口の中がネバつくのは、就寝中に唾液の分泌が低下してお口の中に細菌が繁殖しやすくなるからです。
そして朝起きた直後、お口がネバついているタイミングに、口臭も強くなります。
お腹が減っている時
唾液は食事中にたくさん分泌されますが、食後から次の食事の時間にかけて徐々に分泌量が減少していきます。そして次の食事の前、つまりお腹が減ってくるタイミングではさらに唾液が少なくなり、それにともなって口臭も強くなってしまいます。
緊張している時
唾液の分泌は自律神経の支配を受けています。自律神経には交感神経(興奮の神経)と副交感神経(安静の神経)の2つがあり、交感神経が優位に働くと唾液の分泌は減少し、反対に副交感神経が優位に働くと唾液の分泌は増加します。
緊張した時に心臓がドキドキするのは交感神経が活発に働きだした証拠で、これと同時に唾液の分泌も減少してお口の中が渇きやすくなります。
つまり緊張しているタイミングで、口臭も自然に強くなってしまうわけです。
これは緊張時だけでなく、精神的なストレスを受けた際にも同様の現象がおこります。
夕方ごろ
1日の疲れがピークを迎える夕方ごろは、疲労によるストレスに夕食前の空腹が重なって口臭が強くなります。
生理前・生理中
女性の場合はホルモンの影響を受けて、唾液の量にも変化があらわれます。女性ホルモンの中でもエストロゲンは唾液の分泌に影響をあたえ、エストロゲンが減少する生理前や生理中は唾液の分泌も減り、口臭が強くなります。
また同様に閉経を迎える中年期以降も、エストロゲンの減少によって「ドライマウス」を引き起こしやすく、それに合わせて口臭も強くなってしまいます。
口臭が強くなる時に備えたい5つの対策
以上のことをふまえ、次に口臭が強くなるタイミングに備えたい5つの対策方法についてまとめていきます。
①朝起きたらすぐに歯を磨く
1日の中でお口が最もクサいのは起床時です。「おはよう」のあいさつの前に、一度洗面所でお口をゆすいでおくか、もしくは歯を磨いておくとベストでしょう。
②朝食を必ず摂る
朝食は1日の唾液分泌のリズムを整えるうえで非常に重要です。起床時にニオイの強かった口臭も、朝食を摂ることで唾液の分泌が盛んになり、次第に口臭も弱まります。
反対に朝食を摂らないままでいると朝の口臭がそのまま残り、そのニオイは昼食前の空腹時にかけて強くなっていきます。忙しい朝でも簡単な食事を摂るよう心がけましょう。
③水分をこまめに摂る
お口の中が渇く=口臭が強くなるタイミングです。空腹時や緊張時、疲労時など、お口の中に渇きを感じ始めたら、こまめに水分を摂るようにしましょう。
ただしカフェインの多いコーヒーや糖分が含まれるジュースはかえって口臭を強くしてしまうので注意してください。水分補給にはミネラルウォーターや麦茶などがおすすめです。
⓸シュガーレスガムを咬む
ガムを咬むと唾液に分泌が活発になるため、口臭対策としてはおすすめです。
ただしこちらも糖分の含むガムは虫歯や口臭のリスクを高めてしまうため、ガムを咬むならシュガーレスのものを選ぶようしましょう。
⑤休息・リラックスできる時間も大切に
ストレスや疲れは唾液の分泌を低下させる原因になります。仕事の合間のブレイクタイムは、口臭予防という点においても非常な要素です。
また十分に睡眠やリラックスできる時間、ストレス解消の趣味や運動も、口臭予防に効果的でしょう。
まとめ
口臭には1日のリズムがあり、普段はあまり口臭が気にならない人でもニオイを感じるタイミングがあります。特に「お口の渇き」を感じる時は、自身の口臭がいつもより強くなっている可能性があるので注意しておきましょう。
口臭予防のポイントとしては、できるだけお口の中を潤し、清潔に保つこと。また生活リズムを整えることや十分な休息、睡眠をとることも大切です。
執筆の歯科医師
歯科医師として約10年働いてきた経験を元に、歯科の専門情報を皆さまにわかりやすくお届けします。